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七五三の写真(福井県敦賀市)
丸い帽子をかぶったようなマッシュルームカットの五歳の男の子はスニーカーを履いている。 着物の襟元に蝶ネクタイがデザインされていて、明治時代っぽいから靴でもいいかなあと思うけれども、草履を履きますかと尋ねたら、「本人が嫌がるからこれでいいです」とママは言う。 ...


お宮参りの写真(福岡市博多区)
雨上がりの福岡は蒸し暑い。 お宮参りを済ませて拝殿の前に並んで記念写真を撮ると、ママはもう家に帰りたそうになっている。 待って待って、まだ撮っていないカットがあるんです。 お願いしてもう少しだけ撮らせてもらう。僕の都合というより赤ちゃんのため。どうしたって二人目の子どもは写...


入園・入学の写真(尾道フォトスタジオ)
家に帰って急いでスタジオを掃除して家族を待っていると、ほどなくして大汗をかきながらやってくる。 とりあえず冷たい水でも飲んで落ち着いてほしいところだが、撮影が始まるとテンパり気味になってどうにも撮りづらい。六歳の女の子のほうがよほど落ち着いている。...


お宮参りの写真(兵庫県南あわじ市)
集落の中ほどにある小さな神社が氏神様。 近隣から宮司さんが来てくれて祝詞を上げる。 板張りの拝殿に座って、前に見えるのは小さなお社の中の鏡。見えない神様に向かって頭を下げる。 お宮参りの赤ちゃんにはひとつ歳上のお姉ちゃんがいる。...


前撮りの写真(広島県尾道市)
9月も半ばだというのに、ほとんど真夏の暑さと変わらない。 陽にさらされた砂浜で、白いドレス姿の新婦の額に浮かんだ汗をメイクさんが押さえる。 それでも若い二人は元気だ。新郎さんには跳んだり跳ねたりしてもらって前撮りを楽しむ。 晴れた瀬戸内の海は青く穏やかで、まるで沖縄のようだ。


誕生日の写真(岡山県倉敷市)
トミカやプラレールというのは男の子なら避けて通れぬものであり、つくづく息の長いおもちゃなのだと実感する。 五歳の誕生日を迎えた男の子には、祖父母からのプレゼントとしてそれらが届いている。 箱から取り出すと、もう写真を撮るどころでない。夢中になって組み立て、遊ぶ。...


お宮参りと七五三の写真(福井県坂井市)
「おお、そんな丸い目で見て」二人目の孫を抱っこしたおじいちゃんは顔をほころばせる。 孫はかわいい。赤ちゃんならなおさらである。純真無垢な黒い瞳で見つめられたら無条件に笑顔になる。 二人目も男の子なので、数年もすれば元気に動き回ることになるだろうが、今は彼の腕の中でおとなしい...


前撮りの写真(広島県尾道市)
爽やかな初秋の陽射しの下で撮影できる二人は幸運である。 海岸に向かう車の中で「わたし雨女なんです」と言っていた彼女はよく笑う人だった。 撮影最初のカットで、僕が指示した場所に立ちながら「どんな表情すればいいですか」と聞いてくる。僕はそれに生返事をしながら、カメラを構えると、...


「青旅」鹿島臨海鉄道で夏の海へ
スマホの小さな画面は15歳の少女をいとも容易く吸い込んでしまう。 電車に乗って移動する時間の9割以上、彼女はほとんどスマホを見て過ごす。 窓から外を見るように促しても、ちょっと顔を上げて風景を見やるとすぐにまた視線は手にするスマホに落ちてしまう。...


「青旅」京急線で湘南の海へ
青い海を前にして十五歳の少女は迷っていた。靴を脱いで海に入るか否か。 「海に来るのはこれが最後だよ」と一緒についてきた父親が彼女に言う。 その言葉に背を押されたのか、靴を脱ぐと水に足を浸す。夏の湘南の海は温かい。彼女は水の中の貝殻を探して拾う。...


「青旅」伊賀鉄道で夏の川べりへ
「あっつーい!」少女は頭の上で両手で重ねて叫ぶ。 彼女のつややかな黒髪は落ちてくる真夏の陽射しを吸い込んで熱そうだ。 冗談でじゃあ茶髪にするかと言ったら、「チャパツってなあに?」と聞き返される。 純粋無垢という言葉が頭に浮かぶ。そうか君はまだ大人の階段昇るシンデレラ。...


「青旅」山陽電車で播磨の海へ
model: Momoka 山に挟まれた小さな駅に降り南へ歩くにつれて、少しずつ潮の匂いが強くなってくる。 黒いワンピースに白い小さなバッグを斜めに掛けた12歳の少女は夏の陽射しに照らされた川沿いの道を海に向かって歩く。...


お宮参りの写真(広島県尾道市)
霧雨のような細かい雨が降っているが、困るほどではない。 尾道の烏須井八幡神社は「願い玉」で人気が出て、朝から参拝の人がちらほら見える。 お宮参りの撮影なのに、赤ちゃんを撮らずに、四歳のお兄ちゃんと遊び始めるのでパパとママは戸惑ったかもしれない。...


「とある日」(広島県尾道市)
家の裏手には小さな畑があって、家庭菜園のようになっている。 玉ねぎが育っていて、土から引っこ抜くとソフトボールくらいの大きさがあって見事なものだ。 夏を思わせる陽射しの中で帽子を被ったママは黙々と玉ねぎを抜く。 五歳の女の子は「手伝ってよ」というママの言うことなぞ聞かない。...


七五三の写真(神奈川県座間市)
季節はゆっくり夏になろうとしている。 境内の緑のモミジに薄い紅色の小さな葉っぱが混じると見えるのは、種を遠くに飛ばすための羽である。 朱色の着物を着た三歳の女の子は人見知りしない。遊びに誘うとすぐに馴染む。 ヘアセットのときも美容師さんに行儀が良いと褒められたとママがパパに...


子どもと家族の写真(フォトスタジオ)
おそろいのTシャツを着てきた家族だったが、女の子はママにぴったり張り付いて離れない。 なかなか重苦しい雰囲気で、パパとママはそういう状況になるとは思ってもいなかったに違いない。 その子が少しずつ慣れて、ママの膝を降り、スタジオの中を歩き回るようになるまで30分近くかかる。...


子どもと家族の写真(広島県福山市)
お家の玄関のドアを開けると、三歳になった女の子がとことこ出てきて、そこにある自分のモスグリーンのゴム長靴を手に持ち柄の説明をしてくれる。 彼女を追いかけてママが出てきて、髪を梳かし始める。 なのでそのまま撮影を始める。 彼女はままごと用のおもちゃを引っ張り出してくる。料理を...


七五三の写真(大阪市都島区)
淀川沿いの道に面して櫻宮という神社がある。 桜を名乗るだけあって境内には八重桜が鮮やかな薄紅の花を咲かせている。 ソメイヨシノよりも八重桜のほうが女性らしさを感じさせて、七五三に来た数え七歳の女の子をお祝いしてくれる。 彼女には四つ年上のお姉ちゃんがいて、なにか遊ぼうとする...


「青旅」近鉄電車で吉野川のほとりへ
阿部野橋から1時間電車に揺られて着くのは奈良県大淀町。 大阪で生まれ育った13歳の少女は初めて田舎に来たのかと思えるほど古い昭和の街並みに声を上げる。 「ここ住みたい!」いや無理やろ、とすかざすママがツッコミを入れる。イオンないで?「えー?イオンないとかムリ」...


「とある日」(宮崎県椎葉村)
「とある日」は家族の日常生活をそのまま撮影する。 5年前に「とある日」を撮ったときはまだ生まれていなかった男の子二人。 ふだんは保育園に預けているそうだが、今日は二人とも発熱で家で一日を過ごすことになった。 親はそれだけで天を仰ぎたくなるものである。...


「青旅」東武東上線で彼岸花の咲く野原へ
赤ちゃんのときから撮ってきた女の子は小学5年生になっている。幼い頃はちっちゃかった彼女もすっかり背が伸びた。 物静かだが、よく気の回る子である。「青旅」の撮影の意図を察して動いてくれる。 東上線を小川町で降りて、古い家並みが残る一角を歩く。...


結婚式前撮り(広島県尾道市)
雨上がりの街はしっとりしていて、対岸の向島の山なみが白くぼんやりと霞んでいる 海岸沿いにある大漁桜の下を羽織袴と白無垢姿の新郎新婦はゆっくり歩く。 薄紅の花に花嫁姿がよく似合う。今年は桜が早く咲く。タイミングがよかった。...


お宮参りの写真(東京都北区)
「天気が雨だったらどうするんですか」とママは神社に向かう車を運転しながら僕に尋ねる。「昨日雨だったから心配で」 その心配は杞憂だった。今日は真っ青な青空だ。 ベビーシートで眠る赤ちゃんの顔に春の陽射しが降り注いでいる。 撮影は家のリビングで赤ちゃんの写真を撮るところから始ま...
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