家に帰って急いでスタジオを掃除して家族を待っていると、ほどなくして大汗をかきながらやってくる。
とりあえず冷たい水でも飲んで落ち着いてほしいところだが、撮影が始まるとテンパり気味になってどうにも撮りづらい。六歳の女の子のほうがよほど落ち着いている。
彼女にランドセルを背負ってもらって、気の早い入学記念写真を撮る。
三歳の七五三を撮ったときもそうだったが、彼女は人見知りせずにすぐに一緒に遊んでくれる。
笑いすぎて収拾がつかなくなりそうなところをなんとか押しとどめて、写真を撮らせてもらう。
なんでも真剣に一生懸命になる。それが彼女の良さである。小学生になったらきっとクラスの人気者になるだろう。
楽しければ屈託なく笑うその無邪気さが眩しい。
ついでに家の隣の公園でもランドセル姿の写真を撮って終わり。
スタジオに戻る路地を彼女は駆け出す。
走りたい動機があるのではない。走らずにいられない衝動に駆られたから。
たぶん大人の誰もが幼い頃にその衝動を持っていたはずだ。
どうしてそれはいつしか消えてしまうのだろう。
Commentaires