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「とある日」(広島県尾道市)





家の裏手には小さな畑があって、家庭菜園のようになっている。

 

玉ねぎが育っていて、土から引っこ抜くとソフトボールくらいの大きさがあって見事なものだ。

 

夏を思わせる陽射しの中で帽子を被ったママは黙々と玉ねぎを抜く。

 

五歳の女の子は「手伝ってよ」というママの言うことなぞ聞かない。僕という遊び相手を見つけたから、なにかとまとわりついてくる。 

 

こんなはずじゃなかったんだけどなあ。

 

「とある日」の撮影は、なるべく家族に関わらない。 

 

レンタルなんもしない人という人がいて、依頼中は何もしないことで有名なのだが、「とある日」は写真を撮る以外に何もしないようにしている。

 

ストイックにそれを徹底できないのが僕のダメなところだろう。

 

小学2年生のお姉ちゃんが小学校から帰ってきて、ようやく遊び相手から解放されたと思ったが、結局二人とルールのよくわからない迷路ごっこをして遊ぶ。遊んでいる間は写真を撮ってない。

 

 

「とある日」で撮れたのはほんとうにつまらない写真ばかりである。

 

ママが「こんなんでよかったんでしょうか」と言うが、これでいい。 

 

毎日が楽しいことばかりだと大変だ。

 

毎日同じ仕事や家事をして、ドラマも何もない平凡な日々が続く。それが本来の幸せであろう。

 

 

パパが仕事から帰ってきて、ママが家の片付けをしている間、夜ごはんを彼が作る。

 

茶の間の座卓を囲んで座り、テレビを見ながら家族揃って食事する。

 

いつもながらの夕食風景も子どもたちが大きくなれば四人揃うことも少なくなるだろう。

 

日常は変わる。だから写真を撮っておく。





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