帰り際に兄妹がマンションの前まで出てきて手を振ってくれる。
今日も子どもたちと遊んでしまった。「とある日」はそういう撮影じゃないのに。
兄妹はママがいちいち相手をしなくてもいい年齢だけれど、まだまだ手はかかる。
今週はパパがずっと出張で、ママの「ワンオペ」であるらしい。
ママの朝は1秒も椅子に座ることなくずっと立ちっぱなしである。そして兄が登校したあと妹を連れて電車を乗り継いで幼稚園まで送る。
帰ってきたらおやつを食べてバレエのレッスンへ送り迎え。そして夕食の支度と続く。
それがいつもの生活なのだけど、ほんとにまあ忙しいというか慌ただしい。
母親業はハードだ。子どもの成長記録というよりも、ママががんばっている日常を「とある日」の撮影で残してあげたい。
ママが座っていたのは幼稚園の行き帰りの電車と夕食のときだけであった。
ところで、おうちにはテレビがなかった。
二人の子どもにはそれが当たり前であって、自分たちで勝手に遊ぶ。テレビがなければないで、子どもは自分でどうにかするものである。子どもの頃の僕がまさにそうで、子どもの頃、僕の家にはテレビがなかったのです。
兄妹は昔話を朗読するカセットテープを聞く。なぜそんなものが令和の子どものいる家庭にあるのかが不思議なのだがママは動じる様子もない。子どもたちはごく当たり前のように小さなラジカセから流れる昔話を聞いている。
映像がないと想像力が働く。
これはテレビでは得にくいことで、朗読テープを聴いて得られた想像力はきっとどこかで役に立つ。
そういえば「ラジカセ」という単語を今の若い人は知っているのだろうか。
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