撮影を始める予定時刻は雨であった。 1時間待ち、さらにあと30分待てば止みそうだ。そしてようやく雨が上がった。 彼女が手に持つブーケはミモザの花があしらわれている。春の花だが、亜熱帯に咲く花ではない。よく手配したものだと感心する。 砂浜に出た二人は歓声を上げる。宮古島の海は美しい。はるばる東京から来た甲斐があったろう。 しかも撮影するうちに青空が広がり陽射しが降り注ぐ。これは出来過ぎだ。幸運をモノにした二人。 結婚するカップルにとって前撮りはある種のアトラクションのようなものである。みんながやっているからやらなきゃと感じて撮る。 それはそれでいいのだけど、二人の写真を撮るという意味を考えたい。それだけで一枚の写真が物語になると思う。 波打ち際に二人を立たせてなにも指示を出さないでいると、二人は自然におしゃべりを始める。楽しそうだ。 その様子を撮るだけでいい。それが本来の二人の写真だと思う。婚約者と来た南の島で過ごす時間を閉じ込める。
top of page
bottom of page
Comments