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「青旅」南海電車で夏の終わりの海へ。

  • 執筆者の写真: 三原由宇
    三原由宇
  • 2021年9月18日
  • 読了時間: 2分

model: Yuika

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台風が抜けて晴れると思っていた。

 

夏休みに海へ行けなかった少女は、引き寄せられるように波打ち際へ歩いてゆき、ためらうことなく靴を脱ぐと水にその足を浸す。

 

乾いた花が一気に息を吹き返すにように、子どもらしい無邪気な表情があらわれる。彼女はもうすぐ11歳になるところ。

 

 


 

電車に乗るのは久しぶりという彼女に、千円札を渡して切符を買ってとお願いすると、まだ一度も切符を買ったことがないという。

 

買い方を説明してから、おっかなびっくりタッチパネルに触れる彼女の横顔を撮る。

 

ママが同行しているとはいえ、初めての「一人旅」は緊張するものだ。笑顔に不安が入り混じる。 

 

 



難波から少し離れた街中に、南海電車の小さな駅がある。

 

2両しかない電車が30分に一本行ったり来たりするだけの汐見橋線は、大阪都心のローカル線。

 

途中の木津川駅で降りると、駅前にはなにもない荒涼とした景色が広がっていて、かわいらしい服の少女は、さながらSFマンガの異世界に迷い込んだようだ。

 

何もない駅前で、彼女は猫じゃらしのような草を手に取りくるくると回す。バッタを見つける。

 

友達と公園で何して遊ぶのかと聞いたら、彼女は小さな声で「鬼ごっこ」と答えた。


 

 


知らなった風景が自分のものになると世界は広がる。 

 

鳥取ノ荘駅で降りると、いつしか彼女は自分から先に立って歩き出す。

 

一人だから見える風景があるだろう。

 

夕暮れの海辺でひとしきり遊んだあとの彼女は、ほんの少し大人びて見えた。


 


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三原由宇出張写真室​ Mihara Yuu Trip Photography
 

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