港に着いたフェリーからは夏の小豆島を楽しむ人たちが連なって降りる。
土庄港にほど近い砂州が「エンジェルロード」と呼ばれるようになったのはいつからなのだろう。
その名前を呼ぶのさえ少し恥ずかしく感じてしまう僕はもう立派なおじさんなんだな。
東京から旅行で来たカップルの彼氏は「恋人じゃないんだけど」と小高い丘の上にしつらえられた鐘を前にして呟く。
鐘には「恋人の聖地」というプレートが掲げられている。
二人は今年12月に結婚するという。それならウェディングベルになるじゃないか。
もっともそこで写真を撮ろうとする人たちの行列ができていて、ロマンチックな気分に浸る間もない。
観光客は若い人たちが多かった。
砂浜を歩くと、青い海に彼女の白いワンピースが映える。
夏の雲のように爽やかな二人である。
結婚してずっと長い年月が過ぎて、いつかまたここを訪ねることがあるかもしれない。
なにしろ恋人の聖地なのだし。
この風景はいつまでも変わることがないし。
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