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七五三の写真(奈良県桜井市)


 

 

大神神社の二の鳥居から続く参道に、お参りする人たちが次々に吸い込まれてゆく。

 

鳥居の前の駐車場は工事中だ。二人のおじいさん警備員が停めようと来た車を止めて、別の駐車場の場所を教えている。

    

すぐに理解して移動する人もいれば、しつこいほどに聞き返す老人ドライバーもいる。こういう仕事って、流行りのAIでは置き換えられないだろうなあ。

 

 

 

そこで待ち合わせているつもりだったが、七五三詣でにやってきた家族からメッセンジャーに連絡が来て、もう拝殿の前にいるという。

 

参道を歩いて上る場面からの撮影を考えていたのだが、あてが外れた。

  

駐車場は二の鳥居前にしかないなのに、どうやって上がったのだろうと不思議に思いながら参道を急ぐ。

  

久しぶりにお会いしたパパは、拝殿のすぐ近くにも駐車場があるのだと、こともなげに教えてくれる。穴場的な存在なのだろう。僕は車では来ないだろうけど、覚えておこうっと。

  

そしてやっぱり拝殿の前も人が多い。

 

 

 


やや遅れて、祖父母に連れられて、鮮やかな水色の着物を着た女の子がやってきた。

 

寒そうに身をすくめている。とりあえずわけもわからず来てみましたという感じがする。

 

彼女の目の前にいる僕は見知らぬお兄さん(×おじさん)でしかない。写真を撮ったら、退屈している兄弟は先に帰るというので、あまりゆっくりもしていられない。さてどうアプローチしようか。

  

 

 

家族写真のあと彼女一人と向かい合って撮影。

 

動きを指示すると、その通りに動いてくれるから撮りやすい。素直な子だ。

  

まだ多分に子どもらしさの残る彼女は、僕がふざけると笑ってくれる。ドン引きされなくてよかった。

 

きっとふだんはもっとやんちゃなのだろうな。今日は着物を着ているせいで大人しいのではなかろうか。

 


 

控室で祈祷の順番を待つ間、パパは彼女に七五三の意味を説明する。「神様に、元気に育ちましたって報告するねんで」

「ふーん」と関心なさげな様子で聞いている彼女だけれど、それは薄いベールのように心の中に残って、いつか気がつく日が来るのだろう。

 

少し肌寒い2月終わりの今日は大安である。

 



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