チャペルで新婦と入場する父上はカメラを持っている。腕を組んだまま新郎に向かってレンズを向けて写真を撮る。娘の成長を撮ってきた彼はどうしてもこの時を撮りたかった。 娘の晴れの日を前に、彼はハンカチが二枚いるかもなどと話していたけれど、涙を流す暇もないくらいに写真を撮っていて、父親なのか持込みのフォトグラファーなのかわからない。 子どもを育てるというのは20年近い時間の共有である。 独り立ちした娘には彼女なりの人生がある。たまに失敗もするだろうが、親は心配しながらも干渉せずにただ見守ることしかできないわけで。 それはまた、彼女が夫と新しい家族をつくることで繰り返されてゆく人の営み。 12月にエンゲージメントフォトを撮った二人の結婚式であった。 (その日の写真はこちら) 準備にだいぶ時間をかけたであろう。会場にはナチュラルな装飾や小物がよくまとめられている。 ウェルカムボードはチョコレートのようなシックな一枚板に緑のリースが付けられている。家具職人である新郎が作ったのであろう。シンプルでセンスがいい。 その新郎は結びの挨拶でゲストへの感謝の言葉とともに結婚式をしてよかったと言う。明日からまたいつもの日常が続くからこそ、ハレの日を喜ぶ。いい結婚式であった。 結婚おめでとう。末長くお幸せに。 朝の曇り空が嘘のように晴れた。集合写真で新婦の隣に立つ父上の丸い頭がよく目立つ。 集合写真の締めくくりはいつものようにゲスト全員の「おめでとう!」の唱和。 脚立の上から撮る僕に向かって父上がカメラを構えている。 僕を撮ってどうするというのだろう。カメラで顔が隠れてしまってアルバムに使えない写真になるんですけど、木村八澄さん。
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