百日紅は夏に咲くから得な花だなと思う。春だったら桜に紛れてしまうところだ。
神社の境内の片隅に百日紅の美しい赤紫色が鮮やかに浮かび上がっている。
花がないとその存在に気づかなかったから、真夏にここに来たのは初めてかもしれない。
一ヶ月の赤ちゃんは炎天下でもぐっすり寝ている。
よく寝れるねえとおばあちゃんが言う。
起きてるときの写真は家で撮っていたから赤ちゃんを無理やり起こす必要もない。
祈祷が始まるまで三歳のお姉ちゃんと遊んで過ごす。
彼女は僕を「せんせー」と呼ぶ。フォトグラファーではなく保育園の先生であるようだ。
おこがましいかもしれないがそう思ってくれるのは嬉しい。
とにかく暑いので、祈祷が終わってからの記念写真は時間をかけたくない。
祈祷の間に機嫌を損ねてイヤイヤを発動するお姉ちゃんの気分をリカバリしてから拝殿の前に並んでもらう。
おじいちゃんおばあちゃんも入った全員の写真、家族だけの写真、おじいちゃんおばあちゃんと孫の写真、3カットにかかった時間は3分。
あっという間に終わってしまったので、パパとママは拍子抜けしたかもしれない。
でも暑いのを我慢しながら子どもをあやし続けるよりずっといい。
撮ってるほうも気持ちがいいくらい家族みんなで笑ってくれた。
七五三でもふつうの家族写真でもそうだけれど、楽しかったね、で帰ってもらうのが理想的な撮影である。
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