お宮参りの写真(埼玉県川越市)
- 三原由宇
- 3月8日
- 読了時間: 2分

その日の記憶というのはいつまで残るのだろう。
二、三年は覚えていられるだろう。五年後では、十年後ではどうなるだろう。
忘れたといってどうなるものでもないけれど、記憶に残って入ればいつか思い出して楽しめるときがあるだろうか。
お宮参りの赤ちゃんはそれまで寝ていたのだが、祈祷が済んでいざ写真を撮ろうとしたらぐずり始めてしまう。
お腹が空くタイミングであるようだ。
ミルクあげてくださいと撮影を中断して、参拝客と観光客で溢れる境内を横切って祈祷控室に戻る。
赤ちゃんの世話はいつだってたいへんなものだが、初めての子となればどの親も育児キャパに余裕はない。
慣れない場所で哺乳瓶にお湯を入れてミルクを作って飲ませるとようやく赤ちゃんは落ち着く。
ちょうど次の祈祷が始まったばかりで、薄暗い控室にはもうひと組の家族しかいなかった。
ママが所在なげに立っていたので、ベンチで赤ちゃんを抱っこしてミルクを飲ませるパパの隣に据わってもらう。
赤ちゃんを見てください。ママの左手を赤ちゃんに添えてください。
そうやってわざと作る「自然な」写真は思い出になりうるのだろうか。
わからないけど、そうなるといいなあと思って撮る。
何が思い出になるかなんて今はわからないものだ。
答えが出るのは何年後だろう。
そのときまでのお楽しみ。















Opmerkingen