広場の桜はまだ三分から五分咲きで、混雑を避けるために早起きしてきた家族は、拍子抜けしたというかがっかりしたというか、浮かない顔をしている。
こればかりは仕方のないことで、それなりに桜が咲いているように見える背景を探して撮る。
水色のワンピースを着た女の子は、不思議の国のアリスみたい。くるくる動いてよく笑う。
パパはスマホでずっと動画を撮っている。
子どもの成長はあっという間だから、今の彼女の雰囲気は今だけのもの。電車の窓から過ぎ去る景色を眺めているようなものである。
彼女のランドセルは河津桜の色をしていた。
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