小学校卒業の記念写真である。
「おかしのまちおか」で二人の少女が脇目も振らずに向かったのは、店の一番奥にある駄菓子の棚であった。
武蔵小山駅に続く商店街はアーケードになっている。
朝からしとしと雨降りだし、そこが彼女らのホームグラウンド的な場所なので、そこで写真を撮ろうということになった。
店から出て来た彼女らが手にしているのは干し梅にフーセンガム、マーブルチョコ、スルメを甘辛くしたよくわからないもの。
おしゃれなお菓子を買ってくるのかと思った僕は面食らった。
そんな子どもっぽいものをよく食べるな……
来月から中学生になる二人の背丈はもう大人とほとんど同じだ。
敬語もちゃんと使えるし、カメラの前で指示されたポーズもできる。
それなのに嬉々として駄菓子を買う二人はまだ半分子どもなのだ。
僕は常々二歳児は赤ちゃんと子どもの真ん中で一番かわいいと思っているのだが、女性の十二歳というのは子どもと大人の真ん中なのかもしれない。
子どもと大人の両方の魅力を併せ持っているから写真を撮るのが楽しい。
関西では女の子が振袖を着て神社にお参りする十三詣りというのがあるが、ちょうどこの頃が子どもと大人の境目なのであろう。
二人が進学する中学校はそれぞれ違う。
小学校では仲が良くても、このまま疎遠になってしまうかもしれない。
それでもやっぱり写真を撮っておこう。
今という時間は二度とやってこないのだから。
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