春がすぎて夏が来たような陽気である。
江田島の深い入り江に面した砂浜に寄せる波はなく、静かにたゆたう海がある。
昨年一歳の記念写真を撮った男の子はふた回りくらい大きくなって元気に歩いている。子どもの成長はほんとに早い。
海で遊ぶ親子の自然な様子を撮りつつ、家族写真も撮る。男の子はしっかり自分で立ってカメラを見てくれる。
堤防を歩くと、海に小さな魚やクラゲを見つけた。
パパやママが指さすほうを男の子も見る。見えているのかどうかわからないけど、それはどうでもいいことで。親子三人が共有しているこの時間を僕は撮っている。
二歳の記憶は残らない。今日見た魚の姿、触れた砂や海の水の感触を彼は明日も覚えているだろうか。
きっと彼にとっては毎日がまっさらな状態で立ち現れる。どういう感覚なんだろう。楽しいだろうなあ。僕にもそういう時があったはずだけれど、残念ながら思い出せない。
撮影終えて再び船で宇品に戻る。
ガラ空きの船室にカープのユニフォームを着た熟年の夫婦が乗ってくる。試合があれば県内あちこちからマツダスタジアムを目指して集まる広島県民のカープ愛が僕は好きだ。
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