前撮りの写真(広島市)

すっきりした青空に白い雲が抽象画のように描かれている。
 
「行き合いの空」という言葉が浮かぶ。季節は立秋である。
 

 
ちょっとずんぐりした彼は、最初の数カットで「暑い」を連発して汗を拭いている。白いワンピースの彼女は涼しげなに。
 

 
ほんの一週間ほど前に前撮りの依頼をいただいた。結婚式の演出のアイテムのひとつとして二人の写真が必要であるらしい。
 
撮影の始めに「みなさんどうされてますか」と彼に聞かれる。答えはいつも、人それぞれですね。
 

 
結婚式でもそうだけど「みなさん」は存在しない。
 
あるのは、コトに臨まんとする二人だけであって、どうしたいのかを本人が見つけて決めるしかない。
 

 
安易に「みなさんこうされてますよ〜」と言うのは、「みなさん」にかこつけた責任放棄ではないかと思うんだけど、どうでしょうかね。中にはみんなと同じようにするのが満足、という人もいるだろうし。答えはやっぱり人それぞれなんです。
 

 
二人の立ち姿を撮ってOKを出すと、二人は楽しそうにおしゃべりを始めた。
 
僕は次のポーズの指示は出さずにその様子を撮る。
 

 
そういう写真に二人らしさが出るのだけど、本人たちは気付かないかもしれない。なぜならそれが当たり前だから。