風は涼しくなれども初秋の陽射しはまだまだ厳しく、駅から半里の道のりは日陰を選んで歩く。
道端の草むらに赤い彼岸花が点々と咲いている。古い民家の庭先には百日紅の花が残り、キバナコスモスが揺れている。
時おり車が通るほかは歩く人もいない。
これといった特徴のない、なだらかな山に囲まれた、ごく平凡な田舎の風景である。なんとも形容しづらいが、とてもいい。
そこに暮らしている人たちは、その価値にまったく気づいてないと思うけど。
そこから小さな切り通しを抜けると、昭和時代にできたと思われる分譲住宅地が現れた。
ニューボーンフォトを撮るママのご実家はその中にある。
昭和の終わり頃にママのご両親がこだわって建てたと思えるお家は、それなりに古びて居心地のいい空気を醸し出す。
新しい家はきれいだが、どこかよそよそしい。
傷のついた壁や、散らかった生活用品に囲まれていると、なんとなく安心感を覚える性分である。
思わず家の中も撮りたくなったが、ママが僕に共感してくれると思えなかったのでがまんする。
訪ねたとき起きていた赤ちゃんはほどなくして眠くなったのかぐずりはじめる。それまでにある程度撮れてよかった。
生まれたてのほやほやさん。誕生おめでとう。
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