時代は、ある人には優しく、またある人には冷淡である。
袴姿でスタジオを訪ねてきた三人の大学生は、少々緊張しながら写真に収まる。
卒業式はオンライン、卒業証書は郵送で、4年間の大学生活が終わってしまうらしい。
学生時代は二度と再びやってこないのに、今まで当たり前だった思い出を作ることができないわけで、同情を禁じ得ない。
尾道で大学時代を過ごした彼女らは、この春それぞれの地元に帰り、社会人として新しい生活を始めることになる。
残り少ない学生時代の思い出作りがスタジオ撮影で終わってしまうのはもったいない。時間は今しかないのである。コロナを気にして何もしないのは悲しすぎる。
青春時代を過ごした尾道での思い出を問うたみたが、お互い顔を見合わせて何も出てこぬ。自宅と大学を往復するだけの毎日だったらしい。
三人は美術を学んでいることもあり、最近の卒業制作が一番たいへんでしたと。
それでもこの町で過ごした人生の4年間は、彼女らにとって必要な時間であったわけで、その経験がいつかどこかで役に立つときが必ずあるのです。間違いない。
それぞれに良い人生を歩んでほしいと思う。
スタジオで撮ったあと、尾道の海岸まで出てみる。波が立つほどの強い風にせっかくセットした髪が乱れるが、それは若さと笑顔がカバーしてくれる。
広島地方気象台は、今日「春一番」が中国地方に吹いたと発表した。
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